メールマーケティングの現在地

マーケティングオートメーションに行き着いた

前回、メルマガの基礎編のブログを投稿しましたが、今回はその応用編として「メールマーケティングの現在地」というテーマで、いまメールマーケティングがどのような立ち位置なのか、今後どうなっていくのかという将来的な予測も踏まえながら、お話していきたいと思います。

その前にメルマガの基礎について知りたい方はこちらをご覧ください。

メルマガとは?今更聞けない基礎知識をおさらい

いま、メールマーケティングを実施している企業はどれくらいだと思いますか?これは調査データを確認するまでもなく、「ほとんどの企業が何らか実施している」状態だと思います。

また、SNSなど他のコミュニケーション手段が増えたことで、「どの程度読まれているか」ということも重要になりますが、これに関しては以下の調査データが示しているように、依然として高い割合で読まれているが年代によって傾向の差が出ているということになります。

ECプロモーション別消費行動調査
参照:ECZine「ECプロモーション別消費行動調査」 https://eczine.jp/news/detail/3767

年代によって読まれる傾向が違うということは、裏を返せばセグメンテーションが有効になるということです。安易な表現をすれば、高い年齢層にはメールで訴求し、若い年齢層にはLINEで訴求しましょう、ということになります。

こうしたセグメンテーションを突き詰めていくと、結局は人によって受け取る頻度やチャネルが違うということになります。そして、その最適化をどんどん図ろうとすると、マーケティングは細分化されていき、やがてパーソナライゼーションという方向性に舵を切ります。

こうして生まれたのがマーケティングオートメーションです。人によって受け取るタイミング、チャネルが違うわけで、そうなってくると、シナリオを組んで人によって送るチャネルもメッセージも変えて、なおかつ自動化しよう、という発想になるわけです。いまではたくさんのMAツールが登場しています。

では、このMAツールはどれほど利用されているのでしょうか。

以下の調査データでは、実際に導入済みの企業は13%程度にとどまることがわかりました。

【調査データ】MA導入率13%・認知度56%、スコアリングがとシナリオ設計が使いこなせていない機能という結果に
【調査データ】MA導入率13%・認知度56%、スコアリングがとシナリオ設計が使いこなせていない機能という結果に

 

参照:ferret https://ferret-plus.com/13707

なぜかというと、投資コストが高いからです。あと、複雑だからです。それなりの投資が必要であり、その投資を回収するためには複雑なシナリオ設計を触れる人間が必要になります。シナリオ設計とスコアリングの設計を正しく把握して使いこなせる人間は、そもそもマーケティング業界において多くありません。こうした人材不足もあいまって、体力のある企業しか使えないという現状があります。

しかしそれでも最近は、低コストで導入できるMAも増えてきて、業界専用のMAなども登場したおかげで、それなりにシェアも伸び、検討中の企業もかなり増えたので、マーケティングの一般的なツールとして普及してきた感はあります。使いこなせるかどうか、というのはさておき、「パーソナライゼーション」という概念が浸透してきた、という点においては、これまでのマーケティングの流れからすると、評価されるべき流れだと思います。

メールマーケティングは、そのMAのなかでも中心を担う存在です。B2BだろうとB2Cであろうと関係なく、メールが主軸のチャネルとして活用されており、そう言う意味では、メールマーケティングはまだまだずっと使われているチャネルとして、存在価値を示しています。

いまだにメールが中心である、たった一つの理由

では、なぜメールは依然としてコミュニケーションの中心に存在するのでしょうか。みなさん、その理由を考えたことはありますか?実は、たった一つ、決定的な要因があります。それは「メールアドレス」がすべてのコミュニケーションチャネルの源として存在するためです。

想像してみてください。デジタルという世界において、ログインしているのがあなたであるということを示す唯一の決定的な証拠は何でしょうか?IPアドレスでしょうか?ログイン端末でしょうか?それらはすべて推測にしか過ぎません。唯一、あなただと証明できるのは「メールアドレス」です。メールアドレスは、唯一決定的にそれがあなただと証明できる「個人情報」なのです。

FacebookやTwitterに登録したときのことを思い返してみてください。あるいは、何かのサイトに登録する際のことを思い出してみてください。必ずあなたのメールアドレスの入力を求められませんか?メールアドレスは個人情報の証拠としても使われています。なので、二段階認証でメールアドレスにログインコードを送ることもできます。会員登録の際に、メールアドレスあてに再確認のURLを送ることができます。

実はメールとは、個人情報に直結するものであり、一個人の人に対して企業がメッセージを伝えることができる箱、それがメールボックスなのです。クッキーが廃止されるなど、デジタル上の個人情報の取り扱いがシビアになるなか、唯一と言って良いほど、一個人のプラットフォームとして守られた空間なのです。

どんな時代にも流行り廃りがあります。mixiが流行り、そのあとFacebook、Twitterがきました。いまでもその潮流はかわりませんが、今年突然流行したClubhouseなど、今後も新しいチャネルが増えていくことだと思います。

このように、プラットフォームというものは常に入れ替わりが発生します。常に時代の流れをみながら、どのチャネルがコミュニケーションのプラットフォームとして生き延びていくのか、ウォッチする必要はあるのですが、メールは唯一の個人を特定できるプラットフォームであるため、どんなに「メールが古い」と言われようが、必ず使われるものなのです。

今後のメールマーケティングのあり方

上記の理由から、代替可能な個人情報プラットフォームが出ない限り、メールは無くなりません。したがって、古くから存在するメルマガ、それを活用するメールマーケティングはずっと続くと思われます。では、今後この技術がどのような進化を遂げていくのでしょうか。そのヒントを探る上で欠かせないツールがあります。それは「Gmail」です

Gmailは数年前、あるバージョンアップをしました。それは、重要なメールなのか、キャンペーンなどのプロモーションメールなのかを自動判定しフォルダを振り分ける技術です。実はこのバージョンアップに、今後のメールの方向性を決定づける重要な要素が隠されています。結論から言うと、「コミュニケーションによるCRMは緩やかに衰退し、サービスそのもののクオリティをあげることに注力しなければならない」ということです。どういうことか、説明します。

これまでのメールボックスは、いわば雑多な状態でした。なので、重要なメールとキャンペーンメールが混在しているため、キャンペーンメールであろうと、ユーザーが興味をもてば、いつでも開いてくれる状態でした。

しかし、今後メーラーはAIが中身をみて自動分類し、キャンペーンメールと重要なトランザクションメールを振り分けることになります。重要なメールはもちろんこれからもみていきますが、プロモーション系のメールは、ユーザーがわざわざ「キャンペーンタブ」を表示して取りに行かないといけません。ここには大きな違いがあります。

これまでのメールボックスは、半ば強制的にユーザーにメールに興味を引かせることができたのですが、Gmailの新しい仕様では、ユーザーが能動的にキャンペーンメールをみにいくことになります。

これにより、メールマーケティングは「件名が命」と呼ばれた開封率起点のマーケティングの終焉を迎えます。そして、相対的に、重要な情報(トランザクション系メール)が目を引くことになり、そこでの顧客体験の差を考えていく必要があるのです。

サービスに関するアップデート情報、会員登録完了時のカスタマーエクスペリエンス。そうした、重要なトリガーとなるポイントにおいて、ユーザーの目を引き、興味を引かせる工夫が必要になります。それすなはち、サービスそのもののクオリティをあげることに他なりません。

ここに、今後のメールマーケティングを占う新しい将来像が見えてきます。

重要なアップデートの情報、レシートメール、会員登録メールなど、こうしたトランザクションメールをたくさんのサービスから受け取るようになると、だんだんとユーザーの目も肥えてきます。つまり、より「顧客体験」の品質が高いものが、ユーザーの目にとまるようになり、好まれるようになるのです。

Writer. awoo Japan 日本事業開発責任者 吉澤 和之