台湾はなぜデジタル競争力で日本より優れているのか

日本27位、台湾11位という現実

台湾という国を、もしあなたが「タピオカミルクティーが飲める暖かい国」というイメージだけ持っていたとしたら、それは間違いである。いまや台湾は「人工知能大国」として世界にインパクトを与えるデジタル最先端の技術大国へと変身した。

先日発表された最新の世界デジタル競争力ランキング(スイスの国際経営開発研究所(IMD)調べ)によると、日本は昨年の23位から後退し27位。一方、awooが生まれた台湾は13位から2つ順位をあげて11位となっている。

もはや、日本は台湾に大きく差をつけられている。まずはこの事実をしっかり認識し、反省点を洗い出し、日本はさらなるIT競争力をつけなければならない。

しかし、なぜこのような差が開いてしまっているのか。その要因について考察してみたい。

コロナショックに耐えた台湾経済

2020年のコロナショックによって、世界中の経済が大ダメージを食らう中、台湾はなんとか経済を停滞させずに生き延びられた数少ない国である。

もちろんその主要な要因には、コロナ抑制の成功がある。台湾デジタル担当大臣、オードリータン氏を中心として開発されたマスクマップは、いち早く感染に対する意識の高さを国民に植え付け、その結果、日本が緊急事態宣言とその後の感染対策でごたついているなか、4月から半年以上、感染者がほぼ確認されないなど、台湾のコロナ対策は功を奏した。

一方で、観光業は打撃を食らった。日本や韓国など、台湾を訪れるはずの多くの国々で渡航規制が敷かれたため、観光客は激減した。しかし、その停滞をカバーするように、輸出産業が活性化し、その結果、台湾の2020年GDP(国内総生産)は第4四半期が前年比4.94%増、通年でも2.98%増を記録。2019年の2.96%をも上回っており、コロナショックの影響を見事に相殺している。

台湾を支える半導体産業

そんな台湾経済を支える立役者は、半導体産業だ。もともと台湾は、世界中でコンピューター産業が発展する過程において、その下請けの製造拠点として発展してきた経緯がある。しかし、虎視眈々と技術力を高め、後にACERや、シャープを買収した鴻海精密工業などに代表されるように、イノベーションを起こすIT企業が頭角を表すようになった。

蓋を開ければ、半導体産業の生産能力は、いまや世界トップである(参照)。世界中が台湾の半導体技術に依存しているといっても過言ではない。特にコロナ禍によってPCやタブレット端末、ゲーム機などの半導体部門の需要が伸びたことで、さらに成長が伸長した。

コロナショックによってこうした半導体部門の輸出が急増し、台湾経済を下支えすることになった。これが、2020年台湾GDPが成長した大きな理由の一つである。

また、この半導体産業は今の蔡政権によって大きく発展することになった。それが新南向政策である。ASEAN10ヵ国、インドを中心とする南アジア6ヵ国、オーストラリアとニュージーランドなど、計18ヵ国との関係を強化し、共に経済発展を目指す政策だ。この貿易では主にインフラ関係、IoT技術、Eコマース、ヘルスケア、教育などの分野に注力をし、輸出を活性化した(参照)。

今後も台湾は、IoTや人工知能分野などの研究拠点の建設に積極投資をして、GAFAなどのIT企業を誘致し、さらに高度な技術を吸収していくことになる。誘致された側からしても、コストメリットが大きく、お互いがWinWinの構図を取っているため、隙がない。

2021年はTOP10入りが確実視される

2021年のデジタル競争力ランキングはどういう構図になるのか。おそらく、2021年はコロナショックにおいてどのような政策をとったか、という各国の姿勢がそのままダイレクトに影響されることになるであろう。

20年中にしっかり対策を取った国は国力を取り戻すのも早く、経済力はV時回復を見せる。一方でコロナ対策に乗り遅れた国は、ずるずるとその影響を引きずり、GDPにも影響を及ぼすだろう。

コロナを抑制した国としてピックアップされるのは、台湾、韓国、中国、オーストラリア、ニュージランドなどが挙げられるが、まだ結果を総括するには早すぎる。結果が如実に実態となって現れる2021年が勝負だからである。

21年の終わりごろ、世界はどうなっているのだろうか。乗り切った国と、そうでない国、そこにどのような格差が生まれているのか。早くワクチンが広がって経済力を取り戻す世界を期待したい。

Writer. awoo Japan 日本事業開発責任者 吉澤 和之