2022年1月25日、EC支援セミナー番組「NEXT ACTION of Retail」第五回を開催しました(株式会社Sprocket共催)。コロナ禍によって、ECサイトの役割は大きく変わりました。単なるネットショップという立ち位置を超え、シームレスに顧客と繋がる空間として、ブランドの価値を色濃く体現する場として、より責任範囲が広がり、存在意義も増してきました。
2022年、ECへの最適な投資はどういう基準で行うべきなのか? 何のために、どんなツールを活用していくべきなのか? 本セミナーでは、マガシークの小手川氏をお招きしてお話を伺いました。また、小手川氏が実際に導入を決めた2つのツール(awoo AIとSprocket)について、導入の背景と決断の理由について、リアルな声をお聞きしました。残予算あるいは来期予算のアロケーションを最適化するにはどうしたらよいのか?どんなツールを活用すべきなのか? そのヒントをお届けします。
■開催概要
- 開催日時:2022年1月25日(火)15:00-16:10
- 放映方式:zoomによるライブ配信
- 費用:無料
- 共催:株式会社Sprocket
■出演者
- メインMC|吉澤和之 awoo Japan株式会社 日本事業開発責任者 執行役員
- 共催企業ゲスト|深田浩嗣 株式会社Sprocket 代表取締役社長
- 特別ゲスト| 小手川大介 マガシーク株式会社 コンシューマーサイト事業本部 本部長
- 司会|石井しおり 九州朝日放送及び北海道文化放送の元アナウンサー
見逃し配信中!動画をご覧になりたい方はこちら( https://www.awoo.ai/ja/archived_videos/next_action_of_retail_vol05/ )
コンテンツ
マガシークのマーケティング戦略
マガシーク株式会社は『MAGASEEK』と『d fashion』の2つのファッションEC事業を主力事業としています。2つのサイトで販売している商品はほぼ同じですが、『MAGASEEK』と『d fashion』ではユーザーの特性は大きく異なります。そのため、小手川氏はそれぞれのサイトで独自の戦略を立てているそうです。
ファッション特化のMAGASEEK
- トレンドに敏感なユーザーが多い
- 新商品の打ち出しやコーディネート提案など、ファッションに特化した戦略を立てている
お得と実需のd fashion
- dポイント経済圏の中にあるサイトなので、割引やポイント還元など「お得感」を訴求する戦略を立てている
- 「いま欲しいもの」に対する需要が大きい
コミュニケーションの最適化
各サイトのユーザーへのアプローチについて、小手川氏は「どちらのサイトも、Web広告やマーケティングオートメーション、メルマガといったオーソドックスな手法を使っています。手法は同じですが、各サイトの戦略に合わせてコミュニケーションの最適化を行なっています。」と説明しました。では、具体的にどのような違いがあるのでしょうか?
集客面
- MAGASEEK:Web広告とSEOのウエイトが高い。コアユーザーも多い。
- d fashion:『dマーケット』からの送客が多い。「お得感」を求めるユーザーが多いので、セールやポイント還元といったプロモーション施策にコストをかけている
開封率が高いメルマガの件名
- MAGASEEK:件名に「〇〇様」と名入れする
- d fashion:セールの割引率を入れる
上記のように、メルマガの件名を1つとっても、響くポイントはユーザーによって大きく異なります。マガシークではこのようなノウハウを社内に蓄積する仕組みを整えています。
部署横断型の「プロジェクト制」を採用
マガシークではEC運営において部署横断型の「プロジェクト制」を採用しています。(例:Web接客ツール活用プロジェクト、UI改善プロジェクトなど)プロジェクトメンバーにはマーケティング・ディレクター・Webデザイナー・エンジニアといった関連部署の担当者をアサインし、ツール選定も各部署で連携して行なっているそうです。
プロジェクト制のメリットは、
- ディレクター:やりたい施策
- エンジニア:導入のしやすさ
- 運用担当:使いやすさ
それぞれの立場で総合的にツール導入の判断ができるという点です。これにより、「マーケ側は導入したいけど、システム側は否定的」といった「マーケティングあるある」が解消されます。さらに
- メンバーの事業理解が深まる
- ディレクターがコスト意識を持って施策を実施できる
- Webデザイナーが広告に興味を持つ
といった相互作用も生まれるそうです。
リテンション・LTV施策について
「リテンション・LTV向上」はリテール業界において重要な指標の1つです。マガシークでは「F2転換率」を指標にしています。「前月行った施策が、翌月のF2転換率にどう貢献したか」を「リテンション改善プロジェクト」において月単位でレビューしています。
ツール / ベンダーに求めること
内製化と外注の線引き
awoo Japanの吉澤から「外注化(業務の切り出し)をする際のポイント」について小手川氏に質問しました。小手川氏は、「基本的に『餅は餅屋』だと思っている。AIやレコメンドといった専門技術に関してはプロの力を借りることにしています」と回答しました。
キーワードは「伴走」
外注化の成功の秘訣について、小手川氏は「しっかりと伴走してくれるパートナーを見つけられるか否か」だとし、「導入の目的と背景をベンダー側に丁寧に伝えることが重要です。それを踏まえてベストな提案をしてくださったベンダーさんを選んでいます」と説明しました。
awoo AIの選定理由
唯一無二のタグ付けサービス
小手川氏:いくつかのタグ付けツールを見た中で、「セレンディピティ」を実現できる唯一無二のサービスだと思ったからです。導入はほぼ即決でした。従来型のレコメンドやWeb接客はユーザー1人ひとりに最適化されていく反面、ユーザーの選択肢が狭まっていくのでは? という疑問がありました。
『awoo AI』は全く違うアプローチができると知り「これはめちゃくちゃ良い」と思ったんですよね。『awoo AI』ならファッションECならではの楽しい買い物体験が実現できると思います。
深田氏:『awoo AI』のコンセプトはすごく素敵ですよね。ECサイトで実現できていない領域ですし、小手川様が魅力を感じたのもすごくわかります。
吉澤:ありがとうございます。先日のセミナーで、メディアアーティストの落合陽一氏が「ユーザーが求める『セレンディピティ』とはパーソナライゼーションの一部である」とおっしゃっていて、僕は「なるほど」と思いました。例えば、僕は黒い服が好きで、派手なピンク色の服を着ることはありません。でも僕と近しいライフスタイルの人がピンク色の服を着ていたら、ちょっと見てみたい。自分の世界と大きくかけ離れていない、近しいところから新しい選択肢を広げていくというのが僕らの「セレンディピティ」です。
小手川氏:『awoo AI』には期待しています。絶対に効果が上がってくると思います!
ツール投資の選定基準・優先度
小手川氏は、マーケティングのKPIを「売上と利益」としており、「ツール選定においても売上と工数削減(利益)のバランスを重視している」と述べました。
小手川氏:プロジェクトのKPIをCVRや購入単価にすると施策がシュリンクする可能性があるため、「売上と利益」という大きな数字にこだわっています。
ただ、ブランディング目的ならPVを、A/BテストならCVRを基準にすることもあります。
Q.複数のプロジェクトが並走する中で、ツール選定〜最終決定までどのように進めていくのでしょうか?(吉澤)
小手川氏:プロジェクトオーナーを務める部署のマネージャーから「こういうツール/施策を導入したい。費用は◯円で、想定する効果はこれくらいです。」と私に上がってくる感じですね。導入効果(試算)とマーケティング予算を照らし合わせて導入の優先順位を決定します。
Wrap Up
吉澤と深田氏は「リアル店舗で当たり前に行われている接客やセレンディピティを、EC上でいかに実現させていくかが重要。サービスを通じてユーザーにより良い顧客体験を提供していきたい。」という意見で一致しました。さらに深田氏は、Web接客の意義を「セルフサービスが前提のECサイトのなかで、困っているユーザーを見つけて、適切に声かけをし、個々のニーズに合うサービスを提供することでユーザーと企業の関係性を深めること」だとしました。
最後に、小手川氏は以下の言葉でセミナーを締めくくりました。
「コロナ禍により、EC業界を取り巻く環境は大きく変わりました。これから先ECサイトが生き残るには『独自性』と『お客様にどこまで寄り添えるか』が重要です。awoo AIの導入によってそれを叶えると同時に、複数のツールを掛け合わせることで、より高度で立体的な戦略を立てていきたいと思います。」
見逃し配信中!動画をご覧になりたい方はこちら( https://www.awoo.ai/ja/archived_videos/next_action_of_retail_vol05/ )