2020年台湾の新・小売りの変化とこれから。 未來流通研究所の独占インタビュー

未來流通研究所について

小売業界やEコマース、ロジスティクス、飲食業界、観光、ライフサービスなどの流通業界全般を研究/分析しています。業界の競争マップ、主要なデータの洞察、業界の投資評価、エンタープライズイノベーションの事例などを活用して、世界のビジネストレンドをリアルタイムで追跡し、価値のある情報を発信しています。

 

過去10年間で台湾の小売業界は急速にオンライン化しました。そのトレンドとコロナの影響が組み合わさり、2020年第1四半期のEコマース業界成長率は16.6%に達しています。アメリカのEコマース業界の成長率は、わずか2か月で過去10年間相当の規模に達しており、急激な成長を見せています。世界のEコマース成長率も、実店舗の5倍となっています。

そんな世界の変化を鑑み、アジアの小売業界はコロナによってどのように変化するのでしょうか?また、台湾の小売業界成長の足掛かりとは?

今回は、そういった疑問を紐解くために未來流通研究所の産業アナリストに、ニューリテール(新小売)業界と発展についてお話を伺いました。

台湾のEC化率はアジアで3位、中国と韓国に次ぐ

少子高齢化の影響を受け、台湾小売業界の成長率は伸び悩んでおり、過去5年間の伸び率は5%未満でした。2020年第1四半期にはコロナの影響で実店舗の売上成長率は0.6%落ち込みました。一方、EC業界は急速に成長し、電子機器や家具/調理器具から、食品、輸入品など全ての分野のEC化率が成長し、台湾EC市場が活性化してきています。

 

台湾のEC化率はアジアで3位であり、中国と韓国の次に位置し、アメリカや日本をも上回っています。また、台湾はインターネット普及率もアジア3位であり、強いインフラも今後、台湾のEC化率を押し上げる一つの要因になります。

また、台湾のEC化率はアジアでトップの位置づけですが、CR5(Concentration Ratio、生産集中度)は比較的低く、産業競争が激しく、かつ新興企業が市場に参入しやすいため、企業合併や提携の余地が大いにあります。市場規模の大幅な拡大に加えて、業界がより発展しサービス価値がさらに洗練されることで、台湾市場はより多様化していきます。

日本や中国などの他のアジア諸国では、コロナによる悪影響が大きく、台湾と比べ実店舗の規制が厳しいため、実店舗成長と比べEC成長がさらに顕著です。不動産投資信託ファンド(REIT)を指標にすると、投資ファンドの注力領域がオフラインからオンラインへと極端に移行していること分かります。例えば、ショッピングモールなどの商業施設を保有する「日本リテールファンド投資法人」の株価は低迷しているが、倉庫などの物流施設を保有する「日本プロロジスリート投資法人」は、投資家から買い注文が殺到しているため、二極化が進んでいます。

それだけではなく、前四半期の主要なグローバル企業の純利益の変化を見てみると、アリババ、アマゾン、ジンドン(京東)などのグローバル大手Eコマースグループの純利益が急増していることもわかります。たとえば、アリババの純利益は67億1300万ドルに達し、世界で43位から9位まで上がりました。ジンドンは1,660位から41位に上昇し、純利益は23億2,000万ドルに達しました。さらに、Eコマースビジネスを積極的に強化しているアマゾンとウォルマートも、それぞれ純利益ランキングを38位と12位へ上げました。コロナ期間中、世界的なEC企業は驚異的に成長しています。

実店舗のオフライン戦略:「デジタル化の加速」と「1平方メートルあたり売上高指標の重視」

コロナ渦中、消費者の需要はオンラインにシフトしました。過去にオンラインショッピングに慣れていない消費者もコロナを皮切りにオンラインショッピングが生活の一部と化したケースもあります。コロナによって世界中がニューノーマルへ転換を迫られている中、未來流通研究所は、企業が収益性に関連性の高い「1平方メートルあたりの売上高」指標にもっと着目し、オンラインとオフラインを上手く連携させることが必要だと考えています。たとえば、総店舗敷地面積が変わらなくても、アプリやWebを活用して店舗売上に貢献する仕組みがあれば、「1平方メートルあたりの売上高」指標改善に繋がり、ビジネスの健全度を改善できます。台湾だと、コンビニが提供しているアプリから割安でコーヒーを10杯購入でき、店舗でコーヒーを受け取る仕組みがあります。「1平方メートルあたりの売上高」と「デジタル化」を上手く融合させることで既存ビジネスを軸に、新しい収入源を開拓することが可能になります。

「1平方メートルあたりの売上高」は元々、実店舗ビジネスを他の業界と区別する最も特殊な経営指標であり、多数の店舗を運営する企業には重要なデータでもあります。 「コロナ後のニューノーマルでは、今までのような大規模な多店舗展開ではなく、1平方メートルあたりの売上高を指標とすることで事業の健全度を測るベンチマークとして活用できます。」

未来流通研究所の調査結果によると、台湾の小売業界では、ドラッグストアのパフォーマンスがトップであり、量販店、スーパー、コンビニ業界だとコストコ(COSTCO)とセブンイレブン(7-11)がリードしています。

顧客ライフサイクルを中心にマルチチャネルを構築

 

未来流通研究所の産業アナリストが台湾の小売企業の戦略について調査したところ、近年のトレンドとして実店舗からオンラインへの消費者行動の変化を考慮し、顧客ライフサイクルを中心としたビジネスモデルと戦略立案を行っていることが分かりました。その中でも最も重要な戦略は、 マルチチャネルの構築です。

未来流通研究所によると、「オムニチャネルは日本発の戦略であり、最も有名的な例としては、7&iホールディングスの戦略があります。ホールディングス傘下にはセブンイレブン(コンビニ)、イトーヨーカドー、西武百貨店に加え、赤ちゃん本舗、LOFT、デニーズ(ファミリーレストラン)など、さまざまなチャンネルがあり、あらゆるライフステージの消費者のあらゆるライフニーズに対応します。近年、7&iホールディングスは、グループ全体共通の会員システム、クロスチャネルECプラットフォーム、クロスセルサービスなどを積極的に推進し、顧客ライフバリュー(LTV)の最大化に取り組んでいます。」

台湾だと、統一グループが台湾で最も多様なライフチャネルを保有しており、小売、Eコマース、飲食、決済、宅配、観光、その他多くのチャネルをカバーしています。チャネルの多様性により多くの消費者をサポートする生活インフラとなっています。もう一つの例として、近年積極的に事業拠点を獲得し、急速にビジネス拡大している全聯グループが挙げられます。スーパーマーケット業界でトップシェアを誇る台湾最大規模の企業です。昨年、PX GO(オンラインショッピング)およびPX Pay(決済サービス)を立ち上げ、We Sweetカフェ、火鍋レストランなどもオープンしました。彼らは「オムニチャネル」実現に向け積極的な投資、事業展開を行っています。

EC業界が確固たる地位を確立するためのキーポイント:安定したマーケットシェアの成長

 

未来流通研究所の産業アナリストはさらに、小売業界で成功するには、前述のオムニチャネルに加えて、「安定したマーケットシェアの成長」も非常に重要だと述べています。

「マーケットシェア」は、企業が大規模な成功を収めることができるのかを判断するための重要な評価指標です。近年、SoftBank Vision Fundが率いる多くの投資機関がこの投資戦略を支持し、ベンチャー企業に対し、マーケットシェア拡大のために積極的に資本投入することを推奨しています。

従来の小売業界の特徴は、安定性が高く、営業利益率が低いため、市場で優位性(高いキャッシュフローや経済規模)を持つ企業は、割引キャンペーンや、取引交渉条件、店舗展開予算など、競争相手を凌駕する可能性が高くなります。

そんな中、台湾の小売企業は、Eコマース、会員システム、ロジスティクス、配送、集荷などの「新しいエコシステム」を構築し始めています。現段階で台湾の小売市場で比較的高い業績を上げている企業は、市場シェアにも大きな優位点があり、持続的な成長と逆境での高い回復力を支えるための鍵となります。たとえば、全聯(PX Mart)が率いるスーパーマーケット事業はは、最も重要な市場優位性があります。全聯は、過去10年間に積極的な合併と買収、迅速な店舗展開と会員獲得という戦略を採用しており、市場シェアは2017年の57.3%から2019年の62.6%と、短期間で大幅に増加しています。店舗数とマーケットシェアに優位性を持つことで潤沢なキャッシュフローを生み出す基盤を築き、更なる競合優位性向上に貢献します。
そのため、小売企業を評価するには、マーケットシェア、店舗数、および会員数がより重要な指標になります。