2022年4月26日、EC支援セミナー番組「NEXT ACTION of Retail」第6回をオンラインで開催しました。(株式会社バニッシュ・スタンダード共催)
Eコマースは顧客や市場の変化に合わせてどんどん進化を遂げています。現在、消費者はリアルの店舗とEコマースを自由に往来し、分け隔てなく、店舗と同様の体験をECサイト上でも求めています。企業と消費者をつなぐ新たなデジタル・コミュニケーションの形とは、どういうものなのか? 何を目指すべきなのかについて、有識者を交えて議論しました。
■開催概要 開催期日:2022年4月26日(火) 17:00〜18:15 参加対象:リテール業界、EC/リアル店舗運営のマーケティング担当・責任者 放映方式:zoomによるオンラインウェビナー 参加費:無料 共催:株式会社バニッシュ・スタンダード
■出演者 ・awoo Japan株式会社 VP of Business Development 執行役員 吉澤和之 ・株式会社バニッシュ・スタンダード Head of Sales 薄井崇史 ・株式会社Appify Technologies Chief Value Officer 菅原健一 ・パイオニア株式会社 Chief Commercial & Digital Marketing Officer 木村真紀 ・脳科学者 茂木健一郎(awoo Japan特別顧問)
見逃し配信中! 動画をご覧になりたい方はこちら(https://www.awoo.ai/ja/archived_videos/webinar_220426_newec_experience/)
コンテンツ
ECに対する消費者意識の変化
コロナ禍でECの売上を底上げした商品は?
セミナー冒頭、「コロナ禍で多くの企業でEC化率が上がった」とAppify Technologiesの菅原さんが述べました。菅原さんによると、コロナ禍でECサイトの売上を支えた商品は「いつでも買えるもの」ではなく「『今すぐ買わないと手に入らない』と消費者が感じた商品」だそうです。消費者にとって「特別感がある商品」に人気が集中し、結果的にECサイトの売上を底上げしました。
リテールECの新たな課題とは?
リテールECでは「目的買い」をするユーザーが多く、リアル店舗であたりまえに行われている「衝動買い」や「アップセル」が難しいという傾向があります。木村さんは「今後の課題はオンラインでの買い物体験をリアルに近づけること」だとしました。
コロナ禍で海外ECはどう変化したか?
「海外の事業者はECサイトと実店舗それぞれの役割や強みを生かすためにドラスティックな変化を遂げました。ECサイトとリアル店舗の垣根をなくし、消費者の買い物体験全体を再設計したのです」(菅原さん)
さらに具体的な取り組みとして
- 店舗とECサイトの部署を統合する
- 消費者一人ひとりの顔が浮かぶくらいデータを取得して適切なレコメンドを出すことに注力する
という例をあげました。
日本の事業者はどう変わるべき?
消費者はオンラインとオフラインの垣根を越えて行き来します。
- ECで見た商品を、店舗で実際に確認して買う
- 店舗で見た商品を、ECサイトのレビューを確認してからオンラインで買う
- 人気の商品を店頭ではなくECで販売開始と同時に買う
消費者にとって、どれも自然な行動です。菅原さんは「店舗とECサイトの分断をなくし、消費者が商品を知ってから購入するまでの行動や体験全体を整理し直すことが必要だ」と提言しました。
これからのECに求められる要素
ECに足りない要素は店舗スタッフ
『STAFF START(スタッフスタート)』の薄井さんは「店舗にあってECサイトにない要素は『店舗スタッフ』だ」とし、「ECサイトに店舗スタッフを立たせることで、ECでもリアルと同じ顧客体験を提供できる」と説明しました。
実際に、店舗スタッフの投稿(コーディネートや動画、着用レビュー)を見たユーザーは、見ていないユーザーに比べてCVRが1.5〜1.7倍という結果がでているそうです。薄井さんとパイオニア株式会社の木村さんは「オンラインでの顧客体験の向上とCVR向上にはコンテンツの充実が欠かせない」「スタッフのセンスや経験、スタッフが発信するコンテンツは価値が高い」という意見で一致しました。
優れたテクノロジーは魔法と同義
茂木さんは自身の経験から「チェックアウトの手続きが不要なホテル」や「入店と同時に顔認識し、レジでの会計手続きが不要な店舗(Amazon GO)」における優れた顧客体験について触れ、「優れたテクノロジーは魔法と同義」という言葉で表現しました。
ECサイトも、テクノロジーによって顧客体験の向上は可能です。木村さんは「ショッピングの前段階や購入までの接客のプロセスをどう楽しんでもらうか? そこにECサイトの伸びしろがある」としました。では、「店員さんに相談して購入したい」「買うだけではなく、人間味があるコミュニケーションをしたい」というユーザーに対し、ECサイトはどのようなテクノロジーを提供できるのでしょうか?
スタッフ×デジタルコミュニケーションの可能性
青森県八戸の百貨店スタッフ(50代)の例
『STAFF START』に登録しているスタッフは約11万人。売上に貢献しているスタッフは、若くて容姿端麗な方だけではありません。青森県八戸にある百貨店の50代の女性スタッフは、『STAFF START』に投稿したコンテンツ経由で相当の売り上げを誇ります。理由は、「50代女性」のリアルな着用画像がネット上には少ないからです。
モデルの着用画像やブランドが訴求するビジュアルは消費者の憧れの気持ちを喚起します。一方、「等身大の私」に近い販売スタッフの着用画像やコーディネート提案は、「私も真似してみたい」「この人のおすすめなら安心して購入できる」という気持ちを喚起します。結果、同世代のユーザーの「買いたい」という気持ちを後押ししてコンバージョンにつながるのです。
スタッフの個性はデジタル上で輝く
「青森の店舗に行かないと会えない」というスタッフでも、SNSアカウントを持っていれば全国のユーザーに見ていただける上に、ECに誘導して売上につなげることも可能です。
菅原さんは「個性が輝くのはデジタルだ」とし、例えニッチなニーズだとしても、個性が輝くコンテンツをデジタル上に乗せてトラフィックを増やすことで、ユーザーとのマッチング(コンバージョン)を増やすことができると説明しました。では、コンバージョンが高いコンテンツにトラフィックを増やす手法とは?「50代女性」というキーワードをどのようにECサイト上で訴求したら良いのでしょうか?鈴木さんは「商品データフィードにタグ(キーワード)を入れることでマッチングを創出できる」と提言しました。
商品データの新たな可能性
ハッシュタグがセレンディピティを創出する
日本最大級のファッションECサイト『ZOZO TOWN』でも商品データにハッシュタグの入力を推進するなど、ファッションECにおいてハッシュタグ検索はメジャーになりつつあります。しかし日々の業務で忙しいEC担当者が数百〜数万点ある商品ひとつひとつにハッシュタグを設定することは現実的ではありません。
茂木さんも「脳科学・認知科学においてもタグの自動生成は難しい領域だ」とし、「『ファッションの好み』など頭の中に明確なイメージがあっても言語で形容しがたいものがまだまだある」と説明しました。
そこで『awoo AI』は「商品情報」をベースにAIがハッシュタグ(キーワード)を自動生成し、ユーザーの潜在ニーズにアプローチする手法をとっています。例えば、ECサイト上で「白いTシャツ」を見ているユーザーがいます。ユーザーは「白色のTシャツ」を探している場合もあれば、「吸水速乾」という機能に注目しているユーザーもいます。『awoo AI』では、商品に関するロングテールのキーワードとユーザーの行動をかけ合わせることで商品との出会い=セレンディピティを創出します。
レコメンドは「会話のないコミュニケーション」
菅原さんはハッシュタグや商品画像によるレコメンドを「会話のないコミュニケーション」と表現しました。
「これは好き?」「こっちはどう?」とレコメンドしてサイト内を回遊させるうちにユーザーのことを理解し、さらに良い商品を提案できるようになるからです。一方で店頭スタッフは、数千〜数万人との接客から得た「こういう容姿の方にはこの商品が合う」という経験や、「最初に手に取った商品はどれか」といった情報からお客さまを理解して接客につなげていきます。
ユーザーの行動をヒントにより良いコミュニケーションをECサイトで提供するという点で『STAFF START』と『awoo AI』に共通点が見つかりました。
ショッピングの未来はこう変わる
最後のトピックでは、未来のショッピング体験について議論を交わしました。
近い将来、実店舗ではAIや顔認証技術により、入店から退店までの行動データと会員情報の紐付けが可能になると予想しました。
オフライン・オンライン・アプリ上の行動データの統合が進むことで
- 店頭でポイントカードの提示が不要になる
- 店舗で消費者が商品を手にとってから数秒〜数分で購入できるような仕組みが整う
- ユーザーにより役立つ情報を提供できるようになる
といった『魔法』のような体験が実現するのでは? という意見が出ました。
Wrap up
Wrap Upでは、出演者がセッションの感想を述べました。
ーawoo Japan株式会社 吉澤
オンライン上でセレンディピティや楽しいお買い物体験をお客様に届けられるよう更なる開発を進めていきます。
ー株式会社バニッシュ・スタンダード 薄井さん
未来から逆算してサービス開発に取り組むことが必要だと感じました。店舗・スタッフの価値を信じているので、今後もECサイトの未来を一緒に考えていきたいと思います。
ー脳科学者 茂木さん
例えるなら「寒い人にそっと毛布をかけてあげる」ように、人の幸せや欲望・状況を察知してユーザーが必要とする商品を提供する。そんな魔法をECサイトで叶えていきたいと思います。
ー株式会社Appify Technologies 菅原さん
僕は『魔法』という言葉がとても好きになりました。企業側からサービスを押し付けるのではなく、お客様から見てサービスが一筋に整ったときに魔法のような体験を提供できるのではと思いました。
ーパイオニア株式会社 木村さん
日々の売上をあげるためには「トラフィック×コンバージョンレート×客単価」という公式の各インジゲーターを全て上げていくことが必要です。
人的リソースには限りがありますので、ベンダーさんの活用は必須です。
ECサイトの責任者として、これからもベンダーさんの『魔法』に期待しています。
見逃し配信中! 動画をご覧になりたい方はこちら(https://www.awoo.ai/ja/archived_videos/webinar_220426_newec_experience/)